先日、劇場版 Wake Up,Girls! 七人のアイドル 公開初日のニコニコ動画での劇場上映との同時配信をネットチケットを購入して視聴しました。
かねてより、らき☆スタ、かんなぎ等で話題には事欠かない監督の地方アイドルをモチーフにした新作ということで気になっていました。ですが、当初は配信の予定を知らず、劇場公開に私の住んでいる北海道の劇場が含まれていないということで、試聴手段が円盤の購入のみと思われていたものですが、公開初日に配信の情報を知り、渡りに船とはまさにこのことでした。
ちなみに、同日深夜に放送していたTVアニメ版第一話はまだ見ていません。
とりあえず前置きはこのくらいにして、作品の感想に移りたいと思います。
その1. シナリオについて
まず、芸能界を描く上でキレイ事だけではいけない。それを描写した上で作品としてアイドルアニメに風穴を開けようという気概は伝わってきました。悪い方向へ。最初の数分は
「地方にある場末の芸能事務所からどんどん人が抜けていき、崖っぷちだから地方アイドルを立ち上げよう。」
というわかりやすい物ですが、何よりその描写の仕方が不快で仕方がなかった。素人同然の駆け出しのマネージャー相手に、稚拙な罵倒と世の中は金だと当たり散らす事務所社長。抜けていく女優・モデルに「枕でもして仕事取ってこい」だのという、凡そこれからティーンエイジアイドルを所属させる事務所の社長とは思えない言動。確かに事務所にとってアイドルは商材と割りきって、仕事取ってきてなんぼ、世間に認知されてなんぼ、というのを描きたいのはわかりますが、その発言の後に地方アイドルを結成して売りに出そうという流れを持ってきたところに、
(ああ、アイドルは金を稼ぐ手段でキービジュアルの子達はただの商材か)
という印象を持たせてしまう描写の数々に、なんとも言えない違和感を感じました。
次にアイドルとして所属する女の子達の勧誘シーン、一人ひとりスカウトして、もしくは自分から興味を持ってアイドルオーディションに赴こうとするシーン、この尺が圧倒的に足りない。 地方からアイドルになりたいという子たち、その掘り下げもほんの数人で、大体は過去の受賞歴があるから引っ張ってきた、だので彼女たちがアイドルになろうとする場面を簡単に片付けられてしまい、輝こうとする原石としての描写がもっと欲しい。
「現実が厳しいところを視聴者に見せる」
という部分が先行しすぎて、事務所側の視点である駆け出しマネージャーの松田とそれを何かにつけて罵倒する社長のシーンがクドい。
何度も言うようにその時間があるならもっとオーディションを受けるまでの彼女たちの掘り下げを行うべきだと思うし、
「アイドルは物語だ」
という事務所社長の言葉を借りるなら、その物語をもっと舞台に上る前から見せるべきだと思う。最終的にアイドルオーディションを受けに来た6人が全員合格して実際の練習に移るが、彼女たちが練習している風景やプライベートが挟まれるものの、短いカットの連続で6人を紹介していくために描写がどうにも薄いというか、印象に残りにくい。かろうじて読み取れる部分だけ見てもキャラクターが悪いわけではなく、紹介以上の意味を果たしていないように見える。
キーパーソンの一人、元トップアイドルのセンターポジションである島田真夢が登場する。ある理由があって人気絶頂の頃に挫折し、地方へ戻ってきた都落ちアイドルとして。
彼女がこの挫折から立ち直って、もう一度地方アイドルから始めるところに物語のカタルシスがあるのだろうが、問題はその挫折の理由がボカされて劇場版の中では描写されていない。松田に誘われても頑なにアイドル復帰を拒むが、既にアイドルオーディションに合格しているメンバーの練習風景を見て、そして最後にトップアイドルとして輝いてた頃の自分の映像を見つめて立ち直る。が、頑なに拒むほどの挫折を味わっていたのに、自分のステージを見るという切っ掛けでで復帰したくなるというところは少々疑問である。
最後の山場に行く前のトラブルで、事務所社長が資金を持ち逃げしたためデビューも出来ず自分たちでどうにかするしかなくなった。この部分は本当に必要だったのか?トラブルをここ資金持ち逃げという悪手に集中させて「世間の厳しさ」と言い張るのは少々乱暴ではないだろうか。確かにありえないとは言わないが。
その中でなんとかしようと最後に一回だけでもステージに立ちたいというところは良かったと思う。今まで積み重ねてきた物を出したいという気持ちは素直に心打たれる。
ラストでの締めの台詞は、明らかにお前がその台詞をメタ的に発現するのは違うだろという最大のドッチラケを見せたの、何がしたかったのかまるでわからない。
シナリオは全体的に描写が足りない、もしくはある一点を描きたいがために他がおろそかになっているという印象が拭えませんでした。
その2.画作り
自分が見たのはニコニコ動画での配信だったため、劇場のスクリーンではなくPCのモニターだったのだが、それでも少々キャラクターの顔崩れが気になった。他にはキャラクターの地味目なデザインに不釣り合いなほど目のハイライトが入っているのに、引きの絵になると瞳の描き込みが一気に地味なる等。
作中のカメラワークはあまり派手な画角は取らず、邦画で行われるような落ち着いた定点のカットが多かったのは、彩度を抑えた寒色系でまとまった画作りに合っているし、アイドルの女の子たちがまだ普通の学生で地に足が付いてる様子を表していたように思う。
ダンスシーンでは後列と手前のパースとライティングのせいか、一直線に重なって踊っているように見える。顔がところどころものすごく崩れている部分がある。そしてパンチラをあえて見せるための下半身に寄ったカメラワークと顔作画せいで、彼女たちの表情が遮られる。特にサビ前の下から覗き込むようなアングルは、曲の良さと彼女たちの最初で最後のステージとして挑む姿、表情全てを完全に殺している。このステージで見たいのは輝くアイドルであって、性対象にされているアイドルをみたいのでは無い。あと学校の制服の分厚いスカートはあんな動きじゃフワッとパンツ見えるほど浮き上がって舞ったりしない。確かに高い舞台だと観客の位置によってパンチラはありえるかもしれないが、明らかに覗きこむようなアングルにする必要性は感じない。しかもサビの導入で。
とりあえず、ダンスシーンの作画枚数誇る前に普段からアイドルを可愛く見せることに気を使って欲しいですね。ダンスシーンなんて言わずもがなです。可愛いことが商材のアイドルにとって、これはあまりにもかわいそうですよ。芸能物を描きたくて他がおざなりになるくらいなら、アイドルを押し出したプロモーションはするべきではないと思いますよ。
その3.曲
作詞作曲は安定のMONACAと神前暁の力か、結構良かった。劇伴も劇場、かつ彩度抑えめな画作りに合っていたように思う。
その4.キャラクター
メインのアイドルにあまり突飛なキャラクターは出てこず、あくまで地方出身の普通の女の子がアイドルになる、という部分が崩れていなかったのは良かった。その中でも小さい描写ながら率先して何事もやる姉御肌っぽい《菊間 夏夜》さんが良いと思いますね。
あの良い子がどんな理由でラーメン屋のバイトを靴投げ捨てるほどの勢いで辞めて、ガソリンスタンドに行ったんだろうというのが気になりますね。
まとめ.
芸能活動の厳しさを描くのはいいが、アイドルを商材にするならアイドルの描写もしっかりするべきだと思うし、それも出来ず単なる手段としてアイドルを使い捨てるならアイドルアニメ名乗らんでかんなぎのカラオケ回でもやってくれ。というのが全体の感想です。公式サイトでキービジュアルから抜き出しただけで、解像度も輪郭線のジャギも直されてないアイドル紹介なんて見たことありませんよ。
ただ、キャラクター達に期待が出来る部分もありますし、音楽は良いですからこれからどうなるかはTVアニメ版楽しみに見せてもらいますよ。
なんにせよ、TVアニメの1話と直接繋がっているらしい劇場版のED、劇場で金を払って見なければTVアニメがわからないというのは中々どうかとも思いますし、そこまでやってでも自信を持って送り出すというには、劇場版の作りは少し粗すぎると思いましたね。
ところで一つだけ言いたいのは、ニコニコ配信版だと最後のステージの直前に「この後放送されるダンスシーン無料配信決定!」の文字が画面内に挿し込まれたのは明らかに興を殺ぐし、作品以外のところでケチが付いたように思いますね。
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